「都合の悪い預言」       T列王記22:1〜40


 20章で、北イスラエルの首都サマリヤがアラムに包囲され、イスラエルとアラムは戦います。バアル神を崇拝し、偶像でイスラエルを満たし、神のみこころを損なったアハブ王ですが、神はなおもアハブ王をあわれみ、神こそ主であることを知るために(20:13,28)、とても勝てるはずのないこの戦いで、イスラエルに勝利を与えてくださいました。

 神はアラムを聖絶するよう命じていましたが(20:42)、政治的思惑もあり、アハブ王は、アラムの王を助けます(20:34)。それにより、ひとりの預言者が遣わされ、アハブ王への神からの裁きが予告されます。


1〜4節

 それから3年経ち、南ユダ王国のヨシャパテ王がアハブ王を訪れました。ヨシャパテ王は、イスラエルの王と友好関係を保っていました(22:44)。アハブ王は、ヨシャパテ王に、ラモテ・ギルアデ(ヨシュアの時代からイスラエルにとって重要な町)をアラムから奪い返すために協力を要請します。恐らく、かつて南ユダがアサ王の時代に北イスラエルをけん制するためアラムと同盟を結び、アラムが北イスラエル北部を奪い取った時に(15:16〜21)、ラモテ・ギルアデも含まれていたのでしょう。前回の戦いの時に、奪われた土地は返還されましたが(20:34)、ラモテ・ギルアデは、なぜかまだアラムの手中にあったようです。ヨシャパテ王は、北イスラエルも南ユダも、一体であることを主張して、アハブ王の要請を前向きに受け取ります。


5〜9節

 ヨシャパテ王は、主なる神を信じる王として、主のことばを伺うようにアハブに求めます。アハブ王は、バアル神を信奉しつつも、一応イスラエルの王として、主の預言者にも聞くことがありました。しかし、彼らはアハブ王に都合の良いことを言う預言者であり、アハブ王の意見を国民全体に納得させるために、置かれていました。

 召し集められた400人の預言者が皆同じことを言うので、逆にヨシャパテ王は気になり、他の預言者がいないかを聞きます。そして、いつもアハブ王に都合の悪いことを預言するミカヤを呼ぶことになります。


10〜28節

 ミカヤは、アハブ王の遣いの願いに合わせて、一度はアハブに良いこと(しかし偽り)の預言をします。しかし、2度目には真実を語り、アハブ王がいなくなってイスラエルが混迷する状態を預言し、また他の預言者たちに偽りを言う霊が授けられたとも預言します。 王に都合の悪い預言をしたミカヤは、牢に入れられます。


20〜40節

 
結局ミカヤの預言を無視して、アハブ王もヨシャパテ王も、ラモテ・ギルアデに攻め上ります。この時のヨシャパテの軽率な行動に関しては、後に先見者エフーにとがめられています(U歴代誌19:1〜2)。

 アハブ王は、王である自分が真っ先に狙われることを知っていて、一兵士に変装し、ヨシャパテ王に王服を着せます。しかし、ヨシャパテ王がイスラエルの王ではないことは、 すぐにアラムにばれました。

 にもかかわらず、ひとりの兵士が何気なく、特定の者を狙わずに放った弓矢が、アハブ王の胸当てと草摺り(腰につけるもの)の間の下腹部を射抜きました。そして、ミカヤが預言した通り、アハブ王は帰らぬ人となります。38節の悲惨な死は、21:19の預言の成就です。また、ひとりの預言者が予告した通りになりました(20:42)。

 主の約束は、良いことも悪いことも、実現するのです(ヨシュア23:15)。

 どんなに変装しても、策略を立てても、神はご自身の約束を果たすためには、何気なく放った弓矢さえも用いることができます。

 どんなに自分に都合の良いことを言ってくれる人を周りに置いても、それが主のみこころとは限らないのです。

 自分の思いが強すぎると、自分の願いさえも神のみこころかのように錯覚してしてしまいかねません。いつも自分の思いをうしろにして、空っぽになって、神のみこころを求めていきましょう。

 神の思いは、私の思いよりはるかに高いのです(イザヤ55:8〜9)。ですから、たいていは自分の思いと神の思いは異なると思ってよいのです。自分の思いに固執せず、常に白紙にして、神のみこころを聞いていきましょう。

 そして主のみこころが示されたら、それが自分の思いとは違っていても、みこころに従いましょう。

 神のみこころを無視して、自分の思いが成ったとしても、そこに神の祝福はないのです。


     わたしの思いは、あなたがたの思いと異なり、
    わたしの道は、あなたがたの道と異なるからだ。
         主の御告げ
    天が地よりも高いように、
    わたしの道は、あなたがたの道よりも高く、
    わたしの思いは、あなたがたの思いよりも高い。
                イザヤ書55章8、9節



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