「敵へのおもてなし」  列王記第2 6章1節〜23節

<1〜7節>

 エリシャと預言者集団の住居が手狭になり、材木を切りだして新しい住まいを造ることになりました。預言者の一人が材木を倒している時に、斧の頭(鉄部分)を水の中に落としてしまいました。鉄の斧は当時貴重でした。恐らく持ち主の仕事道具を借りてきたのでしょう。

 彼は、「ああ、わが主。あれは借り物です」と思わず叫びます。とんでもない失敗をしたと、責任を感じたことでしょう。

 でもエリシャは、一本の枝を切って水に投げ込み、斧の頭を浮かばせて無事預言者の手元に斧を返しました。  

 預言者であっても、失敗することや責任を感じて苦悩する時があります。そのようなことがあっても、失望してはならないことを、エリシャはこの出来事を通して教えたのです。

 神は、一本の木の枝を用いて、鉄の斧を浮かばせました。まさかと思えるようなものをも用いて、神はご自身の民を助けることがおできになるのです。

 私たち一人ひとりも小さく弱い者であっても、神が用いる時には、鉄の斧のような重い物を動かし浮かび上がらせることができます。

 また神は、「まさか」と思えるような小さなものや道具やでき事を通してさえも、私たちの前に立ちはだかる難問をも解決してくださるのです。


<8〜14節>

 イスラエルとアラムが戦っていた時に、しばしば預言者エリシャはイスラエルの王に助言しました。

 アラム王は、戦いの計画があまりにも失敗するので、アラムにスパイがいるのではないかと詮索します。

 すると家来の一人が、イスラエルの預言者エリシャがアラム王の寝室で語る言葉までイスラエルの王に告げていると伝えます。

 アラム王は、エリシャの背後に神がいることを認めず、ただエリシャさえ倒せばイスラエルに勝てると思い、エリシャがその時住んでいたドタンの町に大軍を送って包囲します。


<15〜17節>

 エリシャの召使いが朝外に出ると、町が馬と戦車の軍隊に包囲されていました。「ああ、ご主人さま。どうしたらよいのでしょう」と、彼は途方に暮れます。それに対して、エリシャは「恐れるな。私たちとともにいる者は、彼らとともにいる者よりも多いのだから」と言います。

 実際には、エリシャを守る兵士など一人もいませんでした。エリシャは、霊の目で自分の周りを取り囲む主の軍勢を見ていたのです。

 「どうぞ、彼の目を開いて、見えるようにしてください」とエリシャが祈ると、召使いの霊の目が開かれて、「火の馬と戦車がエリシャを取り巻いて山に満ちていた」ことに気付きます。

 大きな戦いで敵に囲まれるような時に、人は恐れます。それは目に見えるものだけを見ているからです。でも霊の目が開かれる時に、神が遣わした強力な助けに取り囲まれていることがわかるようになるのです(エペソ1:17〜19)。


<18〜20節>

 主は、エリシャの祈りに答え、アラムの兵士たちを盲目にしました。彼らは、本来は戦い進んで首都サマリヤにまで行く計画だったでしょう。けれど、戦うどころか、目が見えないためにイスラエルの捕虜となり、エリシャたちに連れられてサマリヤに来ることになります。そこで、主は彼らの目を開かれます。


<21〜23節>

 イスラエルの王はアラムの捕虜を打ち殺そうとしますが、預言者エリシャはそれを止めました。そして、むしろアラムの兵士たちを盛大にもてなし、飲み食いさせてアラムに帰らせたのです。それからは、アラムの略奪隊は二度とイスラエルの地に侵入して来ませんでした。

 敵に報復することなく、平和的な勝利をもたらしたのです。

まとめ

・ 一本の枝を用いて、神は鉄の斧を浮かび上がらせることがおできになります(6〜7節)。   

 こんな小さなものでは役に立たないと人には思えても、神が働かれるなら、どんな小さなものも神の武器となりうるのです。

・見える敵がどんなに強大でも、神の民はそれよりも強い神の軍勢に取り囲まれています(15〜17節)。

 主が霊の目を開いてくださる時に、主の使いが主を恐れる者の回りに陣を張り、助け出してくださることがわかります(詩篇34:7)。

・敵に復讐するのではなく、逆に良くすることで本当の勝利が得られます(22〜23節)。

 復讐は神のなさることです。私たちが心がけるべきことは、できる限りすべての人と平和を保ち、善を持って悪に打ち勝つことです。(ローマ12:17〜21)。

 エリシャは言った。「打ってはなりません。あなたは自分の剣と弓でとりこにした者を打ち 殺しますか。彼らにパンと水をあてがい、飲み食いさせて、彼らの主君のもとに行かせなさい。」

 そこで、王は彼らのために盛大なもてなしをして、彼らに飲み食いをさせて後、彼らを帰した。 こうして彼らは自分たちの主君のもとに戻って行った。それからはアラムの略奪隊は、二度と イスラエルの地に侵入してこなかった。

                     U列王記6章22,23節


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